国連制圧

2004年3月23日 IMAGES AND WORDS
新潮文庫トム・クランシーの「国連制圧」読了。

先に一つお断りを。
T・クランシーの本の書評をするのは今回が最初で最後にしようかと。
はっきり言ってしまうと、この人の本はどれも感想が同じになってしまうんですわ。
面白いか面白くないかの差しかないので。
作品ごとに違う部分と言えば、シリーズの違いと主人公の家庭内不和の行く末だけだったり。

と言う訳で書評。
今回はテロリストがNYの国連本部に人質取って立て篭もるお話。
まぁ当たり前の話ですが最後は主人公率いる組織が突入して人質を解放してハッピーエンド。

以下はT・クランシーの作品全体の評。
この人の作品は全て実際にこういう事態が起こり得ると言う前提で書かれている。
その着眼点を楽しむのが読者の楽しみ方。
冷戦体制の名残や宗教的イデオロギー、国際法のエアポケットなどをえぐり、それを用いた対立形式を作り上げる手法で描かれる戦争を、主人公率いる特殊チームが武力で解決すると言うのが基本の流れとなる。
読者はそれを有り得ない話ではないと思いつつ読み進んでいくと。
ある種預言書のようなものですな。

9.11WTCビルへの航空機激突テロの際に、クランシーが著作で同じ手法を用いたテロを描いていたために彼の名は一躍有名になった。
「レッドオクトーバーを追え」で既に名の売れた作家であったが、ある種の崇拝者まで現れたのはこの事件が起点ではないだろうか。
かくいう私もこの事件の際に名前を始めて知り、読み始めたクチであるのだが。

閑話休題。
今作の着眼点、国連本部(または国連関係施設)はどこの国にも属さず、施設の存在する国の警察権も及ばないため懐に入られると死に体と化すと言うもの。
やはり非常に鋭い。
国連の施設を乗っ取っても何のメリットもない上、加盟諸国の反感を買うだけのためイデオロギー的なテロからは比較的無縁な国連であるが、今作のような場合には非常に狙われやすいものであることが白昼の下に晒された。
またしてもクランシーの狙い通り「有り得るかも」と思わされてしまうのであった。

次回の書評は、創元推理文庫「グリコ・森永事件」です。
ちょっとタイトルうる憶えなので不明確ですが・・・
キツネ目の男の一連の犯行を追い、検証するルポルタージュ。
結構期待の本ですぜ。

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